Q.「成年後見制度支援信託」というのはどんな制度ですか?
成年後見制度支援信託は、近年の親族後見人の横領件数の増加に伴い、導入された制度です。
そもそも成年後見制度とは、認知症や精神疾患などによって意思疎通が難しい方の代理人を家庭裁判所選任する制度でした。
選任された成年後見人が本人に代わって財産を管理・保護していきます。
ところが、親族の後見人が本人の財産を使い込んでしまうケースが後を絶ちません。
家庭裁判所もこの状況を重く見ており、そのために「成年後見制度支援信託」という制度を採り入れました。
この制度は、本人の財産のうち日常的な支払をするのに必要十分なお金だけを親族後見人が管理をし、通常使用しない金銭を信託銀行等に預ける(信託する)仕組みです。
後見人の代わりに信託銀行が本人の大部分の現金・預貯金を保管・管理することにより、後見人等の財産使い込みを予防しようとするものです。
ただし、介護施設に入居するなど、まとまったお金が必要な場合は、家庭裁判所の許可をもらって信託銀行からお金を下ろすこともできます。
この制度は後見制度を利用している方すべてに適用されているわけではなく、家庭裁判所が、後見人であるご親族や司法書士や弁護士などの専門家の意見を聞いて決定します。
また、信託銀行等に預けられるのは金銭に限られています。
その際、信託銀行や司法書士等の専門家への手数料が発生します。
司法書士等の専門家の手数料は家庭裁判所が決定しますが、信託銀行等の手数料は各銀行が定めています。
この制度は本人の意思の尊重に欠けているという批判的な意見があったり、信託銀行への手数料の発生など、良い面ばかりではありません。
また、後見制度の利用自体がご本人やご家族にとって最善だったのかという判断も難しいのが現実です。
成年後見制度を利用される前に、今一度その制度が家族にとって良いのかどうかを考えていただくことをお勧めします。