そもそも「信託」とは?その起源は?

「信託」という言葉を普段から使う人は少ないことと思います。日本語辞書によれば信託とは以下の2つの意味となります。

  1. 信用して任せること
  2. 財産の管理や処分を任せること

信託の起源、中世イギリスのユース(Use)。

信託の起源は、中世イギリスのユース(Use)という制度にあるとされています。

イギリスには昔から、死後、自分の土地を教会に寄付するという慣習がありました。しかし、領主としては、自分の力が及ばない教会に土地の権利が移ってしまっては、税金を課すことができません。そこで、この慣習を禁止する法律が制定されていくわけですが、この法律に対抗する手段としてユースというものが考え出されました。

土地を直接寄付するのではなく、ユースという制度により、その土地から生じる収益を教会に渡す仕組みが作られたのです。

十字軍、長期遠征のために使われた「信託契約」。

その後、中世ヨーロッパでは十字軍の兵士が遠征に行く際、土地を信頼できる人に託し、管理をしてもらい、その利益を妻子らに渡してもらうという契約が出来上がりました。

これが「信託(契約)」の始まりと言われています。文字通り、信じて託すわけですから、「信頼関係」が非常に重要な鍵となります。

日本での信託

日本では平安時代のはじめ、真言宗の開祖・空海(弘法大師)の時代に、世界最古の信託を行っていたという説があり、これが中国からシルクロードを通してヨーロッパに伝わったという説があります。

また、戦国時代には「信長信託」と呼ばれるものがり、京の商人に米を信託し、その米を使って商人が収益を上げ、それを京に進呈するという制度がありました。

信託は、人の美徳を基礎にするもの。

日本初の法学博士の一人、穂積陳重(ほづみのぶしげ)氏は、信託について次のように述べています。

「信託法は文明法中の文明法とも称すべきものであります。何となれば、此の法律は人類最高程度の徳義を其の基礎とするもの」

穂積陳重(ほづみのぶしげ)1855年8月23日(安政2年7月11日)− 1926年(大正15年)4月7日
日本初の法学博士の一人。東京帝国大学(現東京大学)法学部長。英吉利法律学校(中央大学の前身)の創立者の一人。

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