信託銀行の遺言信託について

信託銀行が「遺言信託」と言っているサービスは、公正証書遺言の作成をサポートし、遺言者が亡くなった際、遺言書に記載された 遺産の整理をする業務です。「遺言信託」の具体的な内容は

  1. 資産状況とその資産をどの相続人に相続させるかを把握
  2. 相続 人又は信託銀行自体を遺言執行者として指定する内容の遺言の原案を作成
  3. それを公証役場に持ち込んで、公証人が遺言公正証 書の原本を作成

その後、信託銀行は、遺言公正証書の正本あるいは謄本を預かり保管しておき、遺言者が死亡した際に、 その遺言を執行するというものです。

信託銀行の問題点

① 相続人間に紛争が発生した場合、担当者では対応できず、遺言者の真意が十分に実現できない可能性が高い。

信託銀行は、遺言の執行前の時点で相続人間に紛争が発生した場合には、大抵の場合は遺言執行者(※)に就任しませんし、相続手続の最 中に紛争が発生した場合は、直ちに遺言執行者を辞任して、紛争案件から手を引いてしまいます。したがって、紛争が発生した途端 に、相続人らが遺言者の真意を知らない弁護士に依頼することになり、結局は、遺言者の真意が十分に実現できない結果となります。

当然ですが、遺言者としては自らの死後、相続人間に紛争が発生しないことを希望しています。仮に紛争が発生したとしても、自分の 真意を知っている遺言執行者が意見調整をしてくれることを期待していたはずなのですが、信託銀行の遺言信託を利用した場合に は、そのような遺言者の期待は必ずしも実現できるとは言えなくなります。

② 担当者の転勤で、遺言者の真意が十分に実現できない可能性が高い。

信託銀行の行う遺言信託の場合、最大の問題は、「担当者の転勤」です。銀行職員はたいてい2~3年で転勤してしまうこと が多く、実際に遺言者が死亡した時点では、遺言者の真意を一番把握しているはずの担当者が転勤していて遺言執行業務に従事 することができないという可能性が高いのです。

また、信託銀行では、「遺言書の保管」ということがメリットのように主張されて いますが、公正証書の原本は公正人役場に保管されているので、大きなメリットではないように思います。

用語解説「遺言執行者」
遺言執行者とは、遺言書の内容を具体的に実現する人をいいます。遺言書に書かれている内容・趣旨にそって、相続人の代理人として相続財産を管理し名義変更などの各種の手続を行います。遺言執行者は、遺言で指定される場合と、家庭裁判所により選任される場合とがあります

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